公益財団法人 世界宗教者平和会議日本委員会

Heartful Message

こころの扉

日本の真夏は、鎮魂と平和祈念を

天台宗宗務総長・WCRP日本委員会理事 阿部昌宏

コロナパンデミックの今年も暑い夏が到来し、疫病収束への兆しが見えない不安な日々の生活を強いられる中、一年順延となった東京オリンピック・パラリンピックが開催されています。オリンピック憲章には、スポーツを通じて肉体と意志と精神のすべての資質を高め、平和でより良い世界の構築に貢献すると謳われています。疫病の沈静を願うと共に、参加する選手の躍動が、サポートする世界の人々の感動に繋がり、有意義な大会に終始することを願っています。

時を同じくして、日本の真夏は「戦没者慰霊と世界平和祈念」への思いが篤い季節であります。沖縄・東京をはじめとした全国大空襲はもとより、広島・長崎へ投下された原子爆弾等、また戦地での戦没犠牲者の鎮魂を祈り「過ちは繰返しません」との平和への誓いを確認する季節として定着しています。毎年8月は、全国各地での戦没者への様々な慰霊行事や恒久平和祈念行事が開催され、またマスメディア等による平和運動報道を通して、私は「世界平和」への道程を模索して、この暑い時節を過ごしています。

ローマ教皇ヨハネ・パウロⅡ世聖下の提唱によって、世界の諸宗教指導者がイタリアの聖地アッシジに集い、それぞれの宗教儀礼で、世界平和を希求する祈りを捧げましたのは1986年10月です。その「アッシジの精神」を引き継ぎ、日本宗教代表者会議が主催者となり昭和六十二(1987)年8月3・4日の両日、比叡山山上にて「比叡山宗教サミット-世界宗教者平和の祈りの集い-」が開催され、世界の諸宗教代表者と共に世界の平和を祈ることができました。以来、毎年「平和の祈り」はその時々の国際社会の状況や人々の生活環境を反映しながら続けられてきました。私も毎年ヨーロッパ各地で開催される「世界宗教者平和の祈り」に参加し、また比叡山での宗教サミットを通して、一宗教者・僧侶としての果たすべき責務を考え続けております。

昨年来のコロナ禍により社会の諸相は大きく変化しました。見えないウイルスへの恐れと感染症への不安により、人々の心は思いやりや共感を忘れ、孤立と利己主義による新たな分断と憎悪にさらされています。私たち宗教者は、対話や祈りを通じて世界の平和に献身し、信頼を構築してきました。今こそ、その経験を活かし博愛と利他主義に基づく連帯をより強固にしなければと思いつつ、今年の暑い夏、8月4日比叡山山上にて「世界平和・五輪・パラ五輪成功」を祈ります。

(WCRP会報2021年7月号より)

BACK NUMBER