©Religions for Peace (WCRP) Japan
3月3日〜7日米国ニューヨークの国連本部で核兵器禁止条約の第3回締約国会議が開かれWCRP /RfP日本委員会から事務局長の篠原祥哲が、同委員会国際委員会のフランシス・クリーア事務総長と共に出席した。WCRP日本委員会は過去2回の締約国会議にいずれも出席している。核兵器禁止条約は核兵器の使用、開発、実験、製造、保有、移転、貯蔵、そして使用による威嚇などの行為について法的拘束力のある国際条約として禁止したものである。この核兵器を包括的に禁止し、全面的な廃絶を規定する核兵器禁止条約は、創設以来、核兵器廃絶を核心的な活動目標としているWCRPにとって宿願そのものである。そのためWCRP日本委員会は10年前の2015年から毎年、代表者が日本政府の閣僚級大臣と面会し、禁止条約への支持と参加を要請している。
この第3回目の会議の重要性について、初日のハイレベルセッションで登壇した中満泉国連事務次長は、来年2026年に核兵器禁止条約の初めての再検討会議が計画されていることから、この度の会合は禁止条約の今後の戦略的方向性を決定する重要な機会になるとし、「特別の責務」があると語った。5日間に渡って議論が行われた会議は、不安定化する世界情勢の中で「核兵器のない世界への取り組みを強化する」と宣言を採択して幕を閉じた。会議の内容や主な論点に関しては、長崎大学核兵器廃絶研究センター(RECNA)https://recnatpnw2025.wordpress.com が詳しくリポートしているので、是非ご覧頂きたい。特に会議の中で印象に残ったのは宣言の中で「真の安全保障は、核抑止論ではなく、核兵器の廃絶にある」として「核の脅しは容認できない」と謳ったように、人道上の視点とともに様々な科学的知見を駆使して、核抑止論の幻想から脱却し核兵器の禁止と廃絶こそが国家の安全保障の合理的な選択肢であると力説した議論が多かったことである。私はオーストリアが「核兵器が解決策にはならず、決してなり得ないという確固たる信念」を明確に表明した報告に強く胸を打たれた。
WCRP /RfPサイドイベント「核兵器廃絶のための道徳的義務に関する宗教間、世代間、セクター間の対話」の実施
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会期間中の3月4日国連本部でWCRP /RfPはサイドイベントを開催した。その中で強調されたのは、2019年ドイツ・リンダウ市で開かれた第10回WCRP世界大会で、世界の宗教者と共有した「他者と自己の幸福は本質的に共有されるものであり」、すべての人々が「つながりあういのち」で存在しているという信念である。WCRP国際委員会のフランシス・クーリア事務総長は「私たちの信仰の伝統は、それぞれが生命の尊厳と平和の道義的要請を推進するものであり、核兵器に代表される道徳的・倫理的な違反に反対を表明する力を与えてくれる」と表明し、ICANのメリッサ・パーク事務局長は、「信仰に基づくアクターと市民社会は団結し、核抑止論に対抗し、世界の安全保障パラダイムの軍縮への転換を提唱している」と語った。私も、多くの宗教に共通して歴史的に語り継がれてきた信念は、「核の脅し」による安全保障とは相容れないと主張した。
ウクライナやガザの戦争において度々為政者から核兵器の言及がなされ「使用のリスク」が高まっている。これは日本においても同様に政治指導者から核依存の声が発せられるようになってきている。核兵器は「仕方のない存在」になっているのではないか。核のリスクが非常に高まり、力の支配が席巻する現在の国際社会においてこそ、人道的視点と科学的知見をもとにし法と道義に基づく国際秩序を目指す核兵器禁止条約の存在の意義は重い。第3回締約国会議に参加して、改めて世界の危うさに抗う希望の砦としての核兵器禁止条約の普遍化の必要性を強く実感した。
報告者:WCRP日本委員会 事務局長 篠原祥哲