公益財団法人 世界宗教者平和会議日本委員会

Heartful Message

こころの扉

smile to myself, smiles to others

浄土宗心光院住職・WCRP日本委員会理事長 戸松義晴

この度、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会の理事長に就任いたしました。

WCRP日本委員会は、1970年の第1回世界宗教者平和会議を受け入れた日本宗教連盟の国際問題委員会を母体として設立されました。日本の宗教界が一丸となって、国際平和の実現と地球的諸課題の解決を目指し、また、国内の災害被災者支援などの緊急支援や継続的支援など、いのちの大切さと人間の尊厳を第一とした課題にも取り組んでいます。

世界経済がウィズ・コロナの段階に入ったものの、現在のロシアによるウクライナへの軍事進攻をはじめ、世界各地で起きている紛争等の影響による物価上昇や気候変動が起因となり、食料危機などで多くの人々が苦しみ、不安の中で生活しています。

このような危機的な状況の中で、世界の宗教者が一堂に会して祈り、その平和への強い思いを具体的な形にするために、被災者支援、和解、核廃絶や気候変動、人身取引防止など、タスクフォースを立ち上げて協働し活動を推進しています。その小さな積み重ねは社会に変化をもたらし、世界平和が実現されると信じています。私たち宗教者にとって、平和を願い、その理念を共有してそのために何ができるのかを思考し、「思いを形に」することが大切です。

しかし、多様な教義をルーツとする宗教者が協働するときには困難もあります。ある教えに救われた人が、他の人にも救われてほしいと思ってその教えを勧めることや、教義が相反することも宗教の特質としては少なくありません。仏教では全てのものは相対的に存在していると説かれています。他の宗教も仏教と同じように、教義があり、正当性があるのですから、それに優劣をつけず、互いにありのままに受け入れて協力していく。それは、どの宗教も戦争のない平和で穏やかな生活を願っているからです。認めるということは、相手を知ることから始まります。

WCRPでは、諸宗教間対話によって互いを知る時間を大切にしています。2022年9月下旬にウクライナやロシア、世界の紛争地域の宗教者が集まり、第1回東京平和円卓会議が行われました。日本委員会の理事長として私も国際会議に出席し、実際に顔を合わせて語り合うということが、改めて互いを知るためにとても重要なことだと実感しました。会って、相手の文化を知り、思いを知る。そうして交流した他者とはご縁によって結ばれ、「あの人はどうしているのだろう」という思いが、平和への協働を進める行動原理となると感じました。

私のモットーは、どんなに難しい議題の場でも笑顔でいることです。それは、平和への第一歩は「笑顔」だと思うからです。“smile to myself, smiles to others” というとおり、ありのままの自分を受け入れ、自分に対して微笑みかけることができない人が他の人に心から微笑みかけることは難しいものです。世界の人々が笑顔で日々の生活を送ることができる、そんな平和な世界の実現を願っています。

(WCRP会報2022年11月号より)

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