公益財団法人 世界宗教者平和会議日本委員会

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2025.4.10
国際関係 提言・リリース

Religions for Peace執行委員会声明:世界保健デー


Religions for Peace執行委員会声明
予防可能な妊産婦と新生児の死亡の根絶および女性の健康と幸福の優先に関して
2025年4月7日 | 世界保健デー


私たちReligions for Peace執行委員会は、「Healthy Beginnings, Hopeful Futures(健やかなはじまり、希望のある未来へ)」というテーマのもと、世界保健デーを迎えるにあたり、予防可能な妊産婦と新生児の死亡をなくすこと、そして世界中の女性の健康、尊厳、そして幸福を長期的に確保することへの揺るぎない決意を改めて表明します。

私たちは、今まさに岐路に立たされています。2030年までに妊産婦の生存率に関する世界目標を達成できる見込みがある国はわずか5カ国に1カ国という状況の中、深刻な道徳的および公衆衛生上の危機に直面しています。毎年約30万人の女性が妊娠・出産に関連する合併症で命を落とし、200万人以上の新生児が生後1か月を迎えることなく亡くなっています。これらの壊滅的で、そのほとんどは防ぐことが可能であった命の損失は、世界で最も脆弱で周縁化されたコミュニティに暮らす母親や子どもたちの声が封じ込められている現状を示しています。

母親と子どもの健康は、公正かつ平和で繁栄する社会の基盤となるものです。生命を育み、次世代を担う女性と子どもの幸福は、平等、持続可能性、そして人類の共通の繁栄という私たち全体のビジョンと切り離すことはできません。

長年にわたり、宗教・信仰共同体は、特に公的医療システムが十分に行き届かない周縁化された地域において、重要な医療サービスを提供する上で欠かせないパートナーとしての役割を果たしてきました。信仰を持つ活動家は、深い信頼関係、文化的な洞察、地域社会に根ざした活動により、妊産婦および新生児の健康推進において不可欠な存在となっています。Religions for Peaceは、信仰が科学的根拠に基づく医療、政策、人間中心のアプローチと結びつくことで、変革的な力が発揮できると信じています。私たちは、信仰、科学、奉仕の橋渡しとなるパートナーシップを強化し、引き続き、包括的で持続可能な健康促進を目指していきます。

このような状況において、宗教指導者、信仰に基づく組織(FBO)、および国際的な保健機関との持続可能なパートナーシップは極めて重要です。その象徴的な例が、2022年にReligions for Peaceと世界保健機関(WHO)との間で締結された歴史的な覚書(MoU)であり、これはWHOと諸宗教の世界的指導者プラットフォームとの間で交わされた初の正式な協力関係となりました。この協働を通じて、各国の保健緊急事態への対応に関する国際会議の開催、公衆衛生における信仰の関与に関するハイレベル対話、ワクチン接種の信頼性向上と普及促進のための共同ウェビナーの実施など、多くの取り組みが推進されてきました。

また、すべての国がグローバルな保健アジェンダの達成に向けて、多国間主義の枠組みの中で参加協力することが重要です。私たちは、世界のすべての人々のために保健を推進する最も効果的かつ合意された多国間機関であるWHOのもとで、各国が積極的に関与することを強く奨励します。

同様に、Religions for Peaceは、国連児童基金(UNICEF)との長年にわたる協力関係を通じて、「信仰を基盤とした児童、家庭、地域社会の前向きな変化(FPCC)イニシアチブ」を推進してきました。特に、女性性器切除(FGM)や児童婚といった有害な慣習の撤廃に向けた信仰に基づくアドボカシー活動を進めています。例えば、ガンビアにおけるFGM禁止法廃止の阻止に向けたキャンペーンでは、多様な宗教指導者を結集し、大きな成功を収めました。今後も、宗教指導者を支援・結集し、子どもや家族、地域社会の権利と幸福を守るための取り組みを継続します。

これらのパートナーシップは、信仰に基づく団体と国際機関の協力が、グローバルな保健目標の達成に不可欠であるという世界的な認識の高まりを示しています。今後、私たちが前進を続ける中で、国際社会に対し、戦略的かつ価値観に基づく発展への道筋として、妊産婦および新生児の健康を向上させるために、信仰を基盤とした包括的なアプローチで協働し、投資することを強く求めます。

また、妊産婦および新生児の健康を損なう要因が、ジェンダー格差、貧困、医療への制度的障壁など、より広範な社会的・経済的・文化的要因と深く関連していることを認識しています。したがって、効果的な解決策は、包摂的かつ地域のリーダーシップに根ざしたものでなければなりません。信仰を基盤としたアプローチは、文化や地域、信仰の違いを超えて、女性と子どもへの特有なニーズに応える上で独自の強みを有しています。

この世界保健デーにあたり、私たちは次のような確信を再確認します。すなわち、一人ひとりの健康と幸福は、本質的にすべての人々の繁栄と結びついているということです。 予防可能な妊産婦と新生児の死亡をなくすことは、公衆衛生の優先事項であるだけでなく、道徳的な義務でもあります。

共に私たちは、以下のことに取り組みます:

  • 宗教関係者、政府、政府間機関、市民社会組織およびWHOやユニセフなどの緊密なパートナーと連携し、妊産婦および新生児の死亡をなくすための取り組みを加速させる。
  • 医療サービスを提供する際の宗教指導者、宗教関係者、コミュニティの重要な役割について認識を高め、世界中の女性と子どもの生命、権利、幸福を脅かす有害な慣習や格差に対処する。
  • グローバルな保健の枠組みに信仰を基盤としたアプローチを取り入れることを提唱し、人々を中心に考え、文化的配慮を伴った持続可能な解決策を確保する。
  • 宗教・信仰コミュニティが多様な関係者と協力し、科学的根拠に基づく妊産婦および新生児の健康促進活動に取り組めるよう支援する。

この取り組みの一環として、私たちは以下のことを呼びかけます。

  • 宗教・信仰機関およびコミュニティ は、包括的な信仰に基づくアプローチが、妊産婦の健康と新生児の生存率向上において、重要な役割を果たすという認識を高めることに取り組む。そのために以下を行う:
    • 人々を中心に考え、精神的・文化的に配慮された持続可能な方法で、世界的に健康を向上させるための科学的根拠と信仰に基づく戦略を示す。
    • 宗教・信仰の指導者が母子保健サービスと教育の推進に積極的に関与し、宗教的な教えやコミュニティの集まり、礼拝の場において健康意識を広める。
  • Religions for Peace諸宗教評議会(IRCs) は以下を行う:
    • 国際機関、政府、保健機関、その他の関係者と連携し、宗教指導者を支援し、信仰に基づくリソースを活用することで、妊産婦と乳児の死亡率の削減に寄与する。
    • 信仰に基づく母子保健プログラムのデータ収集を開発・強化し、妊産婦と新生児生存率向上における包括的な信仰主導の介入の影響について不足している研究を補完する。
    • 妊産婦と新生児の健康に関する宗教指導者の能力を向上させ、女性とその家族が十分な情報を得た上で、適切な医療上の判断を行えるよう支援する。
  • すべての宗教・信仰指導者 に対し、以下を呼びかける:
    • 母子保健の課題を道徳的に必須かつ優先事項として世界的なアジェンダに位置づけるために、自らの道徳的権威を活用すること。
    • 世界的な健康啓発キャンペーンに参加し、自らの発信力を活かして妊産婦の健康と新生児の生存を優先する政策、資源配分、投資の推進を求めること。

この世界保健デーにあたり、Religions for Peaceは、連帯、思いやり、諸宗教協力の精神をもって母子保健の推進と、女性の長期的な健康と幸福を優先することを改めて表明します。私たちは、共に一つのグローバルな運動体として、人類が繁栄を共有できる世界を築き続けていきます。「健やかなはじまりは、希望のある未来へ」とつながることを信じています。

日本語仮訳:WCRP日本委員会

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