公益財団法人 世界宗教者平和会議日本委員会

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2021.1.22
提言・リリース

WCRP日本委員会 核兵器禁止条約発効にあたっての声明

核兵器禁止条約が本日発効されました。
この核兵器禁止条約の発効にあたり、WCRP日本委員会による声明を発表します。

公益財団法人世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会
核兵器禁止条約発効にあたっての声明

核兵器廃絶を希求する被爆者、市民、宗教者、国際組織、議員、NGOなどが、これまで多大な努力を傾けてきた核兵器禁止条約が、本日発効されたことに対し、WCRP日本委員会は、心からの祝意と本条約への全面的な支持を改めて表明します。

言うまでもなく、核兵器は壊滅的な被害をもたらす「使ってはならない兵器」「使えない兵器」です。それは存在自体が絶対悪であり、一刻の猶予もなく廃絶されなければならないものです。そして今、この条約の発効によって、核兵器の使用、開発、実験、製造、保有、移転、貯蔵、そして使用による威嚇などの行為が、法的拘束力のある国際条約として禁止されました。まさに核兵器は完全に違法なものとして、悪の烙印が明白に押されたのです。

この条約の発効に至るまでの過程において画期的だったことは、核兵器の非人道性に焦点を当てて条約の制定に努めてきた多くの非核兵器国と共同歩調を取ることを通じて、ヒバクシャ国際署名など、被爆者をはじめとする市民社会の人道主義の主張が、これまで大国の軍事バランス論に翻弄されてきた核議論に大きな影響をあたえ、核兵器廃絶に向けた実質的な軍縮プロセスを作り上げられたことです。これは国家安全保障に重きを置きがちな国際政治に対する人間の倫理性の勝利といえるものであり、この意義は計り知れないものがあります。環境や開発分野にとどまらず、国家の安全保障に直結する核兵器禁止に関する条約が官民の協働によって実を結んだ事実は、人道的アプローチに重きを置いた今後の国際規範形成に向けて、力強い契機となるに違いありません。

さまざまな宗教者からなるWCRPは、宗教的信念をもとにした人道主義による核兵器廃絶を長きにわたって求めてきました。それは創設以来、WCRPに貫かれている宗教者の平和に対する反省が根底にあっての行動でした。1970年の第1回WCRP世界大会の宣言文の中で、宗教者の平和に対する反省を次のように謳いました。「我々は、しばしば、われらの宗教的理想と平和への責任にそむいてきたことを、宗教者として謙虚にそして懺悔の思いをもって告白する。平和の大義に背いてきたのは宗教ではなく、宗教者である。宗教に対するこの背反は、改めることができるし、また改められなければならない。」この精神は、2019年8月ドイツのリンダウ市で開催された第10回WCRP世界大会に集った125カ国1,000名の宗教者にも引き継がれ、宣言文の中で、「根源でつながりあっているがゆえに、我々の幸福は本質的に共有されている。他者を助けることは、自分自身を助けることであり、他者を傷つけることは、自分自身を傷つけること」という信念が共有され、併せて大会参加者は、核兵器禁止条約の署名・批准を促進することへの責務を共に誓い合いました。

この度の条約の発効は、WCRPが志を共にするすべての人々と目指している「核兵器なき世界」に向けた、人類の偉大なる一歩として、衷心より歓迎するものです。そして、同条約の発効を契機に、核使用の脅威が高まっている現在の国際社会における核兵器の全廃に向けて、日本政府に対する切なる要望を、以下の通り改めて表明します。

日本国として核兵器禁止条約を署名・批准し、正式に締約国となること。
核兵器禁止条約と核兵器不拡散条約(NPT)が補完関係であるとの立場に立って、核兵器の廃絶に向けて、かねてから日本政府が主張している「橋渡し役」に真の意味で取り組むこと。
被爆の実相と核兵器使用がもたらす科学的な終末予測をもとに、核抑止政策の信ぴょう性に対する再検証を行うこと。
核兵器に依存しない日本の平和と安全を構築する政策について検討をはじめること。

WCRP日本委員会は、被爆者の「ふたたび被爆者をつくらない」という切実な訴えと、過去の戦争に対する宗教者の反省と平和構築に対する責務を心に刻み、WCRP国際ネットワークと共に「核兵器なき世界」を願う世界の人々と連帯し、祈りと粘り強い対話を通して全面的な核兵器廃絶に向け、力を尽くす決意を新たにします。

2021年1月22日
公益財団法人 世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会
理事長 植松誠

<PDF版>
WCRP日本委員会核兵器禁止条約発効にあたっての声明(PDF)

<プレスリリース>
170プレスリリース WCRP日本委員会が核兵器禁止条約発効を受けて声明を発表、26日に政府へ提出(記者会見のお知らせ)